SH4928 中国:会社董事による競業行為や利益相反取引も刑事犯罪に(上)――中国刑法第十二次改正 若江悠(2024/05/16)

組織法務役員責任・会社訴訟

中国:会社董事による競業行為や利益相反取引も刑事犯罪に(上)
――中国刑法第十二次改正――

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 若 江   悠

 

1 はじめに

 SH4803 中国:会社法の全面改正(上) 川合正倫/万鈞剣(2024/02/08)及びSH4804 中国:会社法の全面改正(下) 川合正倫/万鈞剣(2024/02/09)で紹介したとおり、2023年12月に全人代常務委員会にて可決され2024年7月1日に施行される会社法改正では、利益相反取引に関する改正等、会社董事の責任強化も重要な改正内容に含まれている。すなわち、改正後中国会社法180条では、忠実義務の内容について具体的な規定(自己の利益と会社の利益との衝突を回避するよう措置を講じなければならず、その権限を利用して不正な利益を得てはならない。)を入れた上で、利益相反取引については、主体に監事を追加する、必要な内部承認手続を明確化する(董事会又は株主会に報告した上、定款に従って董事会又は株主会の決議を経る必要あり)、近親者、自ら若しくは近親者等が直接若しくは間接に支配する企業、又は関連当事者を通じて行う契約も利益相反取引規制の対象に追加する(同法182条)などの改正が行われている。このほか、董事の業務執行により故意又は重過失で第三者に損害を与えた場合は直接第三者に対し賠償責任を負うとの規定が新たに追加される(同法191条)など、総じて会社董事の責任を強化する改正がなされている。

  注意を要するのが、刑法においても、会社董事の行為に関連する刑罰等につき改正が行われていることであり、同改正は2024年3月1日から施行されている。今回はこの刑法改正の内容について紹介する。

この記事はプレミアム向け有料記事です
続きはログインしてご覧ください


 

(わかえ・ゆう)

長島・大野・常松法律事務所パートナー。2002年 東京大学法学部卒業、2009年 Harvard Law School卒業(LL.M.、Concentration in International Finance)。2009年から2010年まで、Masuda International(New York)(現 NO&Tニューヨーク・オフィス)に勤務し、2010年から2012年までは、当事務所提携先である中倫律師事務所(北京)に勤務。 現在はNO&T東京オフィスでM&A及び一般企業法務を中心とする中国業務全般を担当するほか、日本国内外のキャピタルマーケッツ及び証券化取引も取り扱う。上海オフィス首席代表を務める。

 

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

長島・大野・常松法律事務所は、約500名の弁護士が所属する日本有数の総合法律事務所です。企業法務におけるあらゆる分野のリーガルサービスをワンストップで提供し、国内案件及び国際案件の双方に豊富な経験と実績を有しています。

長島・大野・常松法律事務所は、約500名の弁護士が所属する日本有数の総合法律事務所です。企業法務におけるあらゆる分野のリーガルサービスをワンストップで提供し、国内案件及び国際案件の双方に豊富な経験と実績を有しています。

当事務所は、東京、ニューヨーク、シンガポール、バンコク、ホーチミン、ハノイ、ジャカルタ及び上海に拠点を構えています。また、東京オフィス内には、日本企業によるアジア地域への進出や業務展開を支援する「アジアプラクティスグループ(APG)」及び「中国プラクティスグループ(CPG)」が組織されています。当事務所は、国内外の拠点で執務する弁護士が緊密な連携を図り、更に現地の有力な法律事務所との提携及び協力関係も活かして、特定の国・地域に限定されない総合的なリーガルサービスを提供しています。

詳しくは、こちらをご覧ください。

タイトルとURLをコピーしました