GX2040ビジョン(案)の策定
(脱炭素成長型経済構造移行推進戦略 改訂)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 宮 川 賢 司
弁護士 香 川 遼太郎
弁護士 新 庄 絢
1 はじめに
内閣官房GX実行推進室は、2024年12月26日、GX(Green Transformation)に向けた投資の予見可能性を高めるため、より長期的な方向性を示す「GX2040ビジョン」(以下「本ビジョン」という。)の案をまとめた[1]。
GXまたは脱炭素を実現するためには、化石燃料に依存している既存の経済活動から再生エネルギー等を中心とする新規の経済活動に移行する必要があり、企業にとっては多額の初期投資が必要になる。政府は、この初期投資を後押しするために、10年間で20兆円規模の先行投資支援策(補助金や税控除等)を打ち出しており、150兆円規模の官民投資を呼び込むための成長志向型カーボンプライシング構想を実行に移している。さらに、補助金や税控除等のインセンティブのみならず、温室効果ガス(以下「GHG」という。)の多排出企業(すなわち年間に直接排出ベースでGHG10万トン以上排出する企業)に一定のGHG排出削減義務を課すキャップ&トレード型の排出量取引制度(GXリーグフェーズ2)が2026年度より開始される見込みである。
そこで、GX実行会議は、国内投資を後押しし、すでに始動しているGXの取組を2040年に向けて飛躍させることを目的として、2023年7月に策定された「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」を改訂し、新たに本ビジョンを策定し、公表する予定である。
本稿では、本ビジョンの内容について概説する。
この記事はプレミアム向け有料記事です
続きはログインしてご覧ください
(みやがわ けんじ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所スペシャル・カウンセル弁護士。1997年慶應義塾大学法学部卒業。2000年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2004年ロンドン大学(University College London)ロースクール(LL.M.)修了。2019年から慶應義塾大学非常勤講師(Legal Presentation and Negotiation)。国内外の金融取引、不動産取引、気候変動関連法務および電子署名等のデジタルトランスフォーメーション関連法務を専門とする。
(かがわ・りょうたろう)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。早稲田大学法学部卒業。2022年弁護士登録(東京弁護士会)。執筆として「非化石証書の制度と実務」(NBL2023年11月1日号)等。
(しんじょう・あや)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2020年慶應義塾大学法学部卒業。2022年東京大学法科大学院修了。2023年弁護士登録(第二東京弁護士会)。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ハノイ、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国およびロンドン、ブリュッセルに拠点を有する。
<連絡先>
〒100-8136 東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビルディング
* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用