SH5350 厚労省・公取委、「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造改革のための独占禁止法関係事例集」を策定 臼杵善治/淺井茉里菜/安念リサ(2025/03/12)

取引法務競争法(独禁法)・下請法

厚労省・公取委、「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた
産業構造改革のための独占禁止法関係事例集」を策定

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 臼 杵 善 治

弁護士 淺 井 茉里菜

弁護士 安 念 リ サ

 

1 はじめに

 厚生労働省および公正取引委員会(以下「公取委」という。)は、2025年2月17日、「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造改革のための独占禁止法関係事例集」(以下「本事例集」という。)を策定した[1]。厚生労働省は、後発医薬品の供給不安が長期化している要因として、少量多品目生産が多いこと、中小規模で生産能力や生産数量が限定的な企業が多いこと、一社の供給停止が(他社における在庫確保の必要性から)同成分の品目に限定出荷が拡大すること等の産業構造上の課題があると分析している[2]。また、厚生労働省は、安定的に後発医薬品を供給するために、品目統合や企業間の連携、協力、事業再編等によって産業構造上の課題を改善することを提言している。

 他方で、産業構造改革の取組みに際しては、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独禁法」という。)の遵守が必要になるところ、産業構造改革に対する独禁法の適用および執行の透明性や事業者における予見可能性を示すために、本事例集が策定された。本事例集は、後発医薬品製造販売業者に向けて、企業結合、情報交換、品目統合、共同生産、製造委託、共同調達、共同配送およびその他の企業間の連携・協力における取組みについて、独禁法上問題とならない行為等の具体的な事例を紹介するとともに、独禁法上の基本的な考え方を示した資料であるが、製薬業界全体に共通する内容も含まれており、厚生労働省および公取委の考え方を示す重要な参考資料であると考えられる。

 本稿では、本事例集における、企業間の連携・協力に関する各取組みにおける独禁法上の分析の概要について紹介する。

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(うすき・よしはる)


アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。
2003年慶應義塾大学法学部卒業。2006年慶應義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(第一東京)。2015年University of London, LL.M. in Competition Law修了。
公正取引委員会による審査手続対応、海外当局による調査手続対応、国内外の競争法当局に対する企業結合届出のサポート、競争法コンプライアンスマニュアル作成・競争法コンプライアンストレーニング、流通取引規制に関するアドバイス、景品表示法対応等の多数の案件を取り扱っている。

 

(あさい・まりな)


アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2014年東京大学法学部卒業。2016年慶応義塾大学法科大学院卒業。2017年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2023年コロンビア・ロースクール(LL.M.)修了。2024年ニューヨーク州弁護士登録。
ヘルスケアの分野において豊富な経験を有しており、医薬品や医療機器等のヘルスケアビジネスに関わる国内外の企業に対してアドバイスを行っています。

 

(あんねん・りさ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2019年早稲田大学法学部卒業。2021年一橋大学法科大学院卒業。2022年弁護士登録(第一東京弁護士会)。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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* 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」は、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業および弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所を含むグループの総称として使用

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