米国著作権局、Invoke社のAI生成作品の著作権を登録
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士・カリフォルニア州弁護士 井 上 乾 介
弁護士 風 間 凜汰郎
ニューサウスウェールズ州弁護士・上海オフィス顧問 石 瀛
1 はじめに
近年、ユーザーの言語指令(プロンプト)を通じて生成AIが生み出す芸術作品の著作物性をめぐり活発な議論が行われている。米国著作権局は、2025年1月29日に生成AIによるアウトプットの著作物性に関するレポート[1]を公表しており、人間による創作性のある表現のみが著作権の保護を受けられるという基本的な立場を示している[2]。現行の技術ではAIユーザーがプロンプトによってAIによるアウトプットの内容をコントロールできないことを前提として、このレポートでは、プロンプトの著作物性が否定されている。
しかし、AIが関与している作品だからといって、常に著作物性が否定されるわけではない。十分な人間の創作的介在が認められる場合には、AIを用いて生成されたアウトプットも著作物として保護され得る。実際、米国著作権局は、Invoke AI, Inc.(以下「Invoke社」という。)が生成AIツールのみを用いて制作した絵画作品「A Single Piece of American Cheese」(以下「本作品」という。)について、2025年1月30日に著作権登録(以下「本登録」という。)を認めた[3]。
本稿では本登録を概観し、本作品に使用された手法を考察するとともに、実務上の示唆を検討する。
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(いのうえ・けんすけ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 スペシャル・カウンセル。2004年一橋大学法学部卒業。2007年慶応義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年カリフォルニア大学バークレー校・ロースクール(LL.M.)修了。2017年カリフォルニア州弁護士登録。著作権法をはじめとする知的財産法、個人情報保護法をはじめとする各国データ保護法を専門とする。
(かざま・りんたろう)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所シニア・アソシエイト。2015年早稲田大学法学部卒業。2017年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2023年University of Southern California (LL.M., Certificate Media and Entertainment Law)修了。商標法・著作権法を中心に知的財産に関する案件を扱うほか、国内外の取引・電子商取引等に関するアドバイスを提供している。
(せき・いん)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所シニア・アソシエイト。2019年オーストラリアニューサウスウェールズ大学法学部卒業。2019年ニューサウスウェールズ州事務弁護士登録。2020年中国法律職業資格取得。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ハノイ、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国およびロンドン、ブリュッセルに拠点を有する。
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