インドネシア:正副大統領候補者の資格要件に関する
憲法裁判所の判決(2)
――ジョコウィ大統領長男の出馬に道を拓く――
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 前 川 陽 一
2 憲法裁判所について
インドネシアは、大統領(執行府)、国会(立法府)、裁判所(司法府)が独立して互いに権力の行使を牽制する三権分立の統治制度を採用している。三権分立制度を前提として、憲法裁判所は、法律が憲法に適合しているかどうかを審査する特別の裁判所であり、最高裁判所を頂点とする裁判所の系列からは独立した司法機関として第3次憲法改正(2001年)により新たに設置された。その権限の範囲は、法律の違憲審査のほか、政府機関の間の権限に関する紛争、政党の解散、選挙結果に関する紛争、国会による正副大統領の罷免決議に対する審査に及び、これらの事件について初審かつ最終審として裁判を行い、その判断は終局的なものである。憲法裁判所により違憲とされた法律の条項は、将来に向かってその効力を失う。
憲法裁判所は、9名の判事で構成され、最高裁判所、国会及び大統領がそれぞれ3名を指名し、大統領が任命する。判決において、全員一致の意見に達しなかった場合には、単純多数の意見が憲法裁判所の判決となる。
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(まえかわ・よういち)
1998年東京大学法学部卒業。2006年東京大学法科大学院修了。2007年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2013年Northwestern University School of Law卒業(LL.M.)。2013年~2016年長島・大野・常松法律事務所ジャカルタ・デスク(Soemadipradja & Taher内)勤務。2019年~2023年長島・大野・常松法律事務所シンガポール・オフィス勤務。2024年~長島・大野・常松法律事務所ジャカルタ・オフィス(IM & Partners in association with Nagashima Ohno & Tsunematsu)勤務。
ジャカルタの業務提携先法律事務所に3年間駐在し、日本企業のインドネシア進出及び投資、進出後の労務問題、危機管理等に関して豊富な経験を有する。2019年から2023年までのシンガポール・オフィスでの執務を経て、2024年1月からジャカルタを拠点として、日本企業のインドネシアにおけるJV案件、M&A案件、不動産取引、既進出企業の現地での日々のオペレーションに伴う法務面のアドバイスを行っている。
長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/
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