◇SH2057◇インドネシア:Online Single Submissionシステムの導入(3・完) 福井信雄 小林亜維子(2018/08/30)

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インドネシア:Online Single Submissionシステムの導入(3・完)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 福 井 信 雄

弁護士 小 林 亜維子

 

 前稿に引き続き、本稿は、電子的に統合された事業許認可サービスに関する政令2018年24号(以下「政令2018年24号」という。)が新たに導入したOnline Single Submission(以下「OSS」という。)システムを利用した許認可の申請・取得手続の概要について解説する。

 

5. 事業許可

 政令2018年24号では、会社の設立後に事業許可を取得することとなっており、事業の開始にあたって生産設備等のインフラの建設を必要とするかどうか、また、必要であるとして既にインフラが整っているかどうかによって事業許可の取得手続を3種類に分類している。インフラが不要な事業及びインフラは必要であるが既に整っている事業については、事業識別番号を取得した後、直ちに事業許可の申請・取得が可能とされている。他方、インフラを整備する必要のある事業については、取得した事業許可が直ちに有効になるわけではなく、申請企業が①立地許可、②水域立地許可、③環境許可、及び④建設許可(Izin Mendirikan Bangunan,IMB)(のうち該当するもの)を取得する旨の誓約書をOSSシステムにより提出した後、経済調整省(再移管後は投資調整庁)が、これらの許可が取得されたこと及び必要な費用の支払い等の要件が満たされたことを確認した上で、当該事業許可が有効になったことを当該企業に通知するとしている。事業許可が発行された後であっても、事業許可及び操業許可申請の際に提出した誓約書記載の事項を満たすことができなかった場合には、事業許可は取り消される。

 

6. 操業許可

 政令2018年24号及び経済調整省が2018年7月に公表したOSSを通じて取得する事業許認可に関する企業のためのガイドライン(以下「ガイドライン」という。)は、申請企業が、各事業を行うにあたって要求される法令上の要件(例えば、保健分野の場合、食料品衛生証書、化粧品製造証書やクリニック運営許可等の取得である。)を満たす旨の誓約書をOSSシステムに提出すると、操業許可が自動的に発行されるとしている。しかし、かかる操業許可は直ちに有効となるわけではなく、各管轄省庁の指示による申請書類の修正、要求される場合には建物や施設の立ち入り検査等を経て、経済調整省(再移管後は投資調整庁)が、操業許可を有効とするにあたって必要な要件を満たしているかを判断した上で、操業許可を承認するかどうかを申請企業に通知するものとされている。なお、業種及び具体的な事業内容次第では、操業許可を取得する必要はなく、事業許可のみで事業を行うことができる場合もあることから、操業許可の要否については個別の検討が必要となる。

 

7. OSSシステムの今後

 OSSシステムに関して政令2018年24号及びガイドラインが発行されたものの、投資調整庁がこれまで通り対応する業務と経済調整省(再移管後は投資調整庁)がOSSシステムを利用して対応する業務の切り分けやOSSシステムの実務上の運用等については未だに不明瞭な点が多く、今後更に公表されるであろう各省庁の新規則やOSSシステムの運用を注視する必要がある。関連省庁の協力の下、OSSシステムが政令2018年24号及びガイドラインのとおりに運用されるようになれば、外国企業にとって、インドネシアでの許認可申請手続がより簡素化・迅速化され、投資環境が向上するものと思われる。

(終わり)

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