SH4199 Legal Operationsの実践(8)――Organization Optimization & Health 酒井貴徳(2022/11/15)

法務組織運営、法務業界

Legal Operationsの実践(8)
――Organization Optimization & Health――

法律事務所LEACT

弁護士 酒 井 貴 徳

 

  • Legal Operationsの実践(23)――最終回――連載の終わりにあたって(座談会)(上)
  • Legal Operationsの実践(24)――最終回――連載の終わりにあたって(座談会)(下)

 

1 はじめに

 筆者は、国内の大手法律事務所、留学・海外研修、スタートアップ企業を経て、現在は法律事務所を設立・運営している。一弁護士から事業会社、そして事務所経営と役割が大きく変わるにつれ、組織の生産性とメンバーの成功・満足を両立する組織マネジメントの重要性を肌で感じる機会が多くなった。法務内外での過去の取組みや失敗を活かし、現在では、成長企業[1]を中心に法務組織の立ち上げや構築をサポートしている。

 本稿では、Legal OperationsのCore 12の1つであるOrganization Optimization & Healthについて、CLOCが提示する問題意識を紹介した上で、筆者のわずかばかりの経験に基づく私見を述べる。なお、本稿の内容は筆者の所属組織を代表するものではなく、筆者個人の意見や解釈に基づくものである。

 

2 Organization Optimization & Healthとは?

 まず、CLOCがCore12の中で提示するOrganization Optimization & Health(以下「OO&H」という。)の考え方について取り上げる。OO&Hとは、法務組織の最適化・健全化を意味し、チーム組成という観点から採用活動もこれに含まれる。法務組織そのものに関する問題であり、Legal Operationsの中でもコアとなる[2]

 CLOCは、米国企業を念頭に、多くの法務組織の現状について、以下のとおり分析する。すなわち、明確な組織ビジョンがないままチームが組成されており、結果として、採用時においても、組織への適応性や長期的な生産性よりも、短期的なリソース不足の解消が優先されてしまう。さらに、メンバー個人の経験(キャリアプランやスキル向上、仕事に対する満足度)が軽視されるという問題を抱えている。

 このような現状に対して、CLOCは、目指すべき理想として、バランスが取れて、推進力があり、影響力の大きいチームを設計・サポートすること、組織への適応性を有するメンバーを採用し、多様なスキルと視点を補完し合える状態を作ることを掲げている。

 具体的な施策の例として、①協力的で全体的なビジョンを組織と人事計画にもたらす、②客観的で公平な採用プロセスを設計し、多様で効果的な組織を作る、③昇進や特別な機会を通じて、優秀な従業員を奨励する、④ワーク・ライフ・バランスやメンタルヘルス対策に注力し、チームの健康をサポートする、⑤メンタリング、インターンシッププログラム、サクセッションプランニングに投資し、人材のパイプラインを構築するという点が挙げられている。

 なお、OO&Hに関する2022年のトレンドとして、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)が掲げられている。D&Iへの取組みの重要性は法務部門内の話にとどまらず、法律事務所をはじめとする外部ベンダーにも社内と同様のD&Iの基準を課すことが重要だと述べられている[3]。日本においても、最近、日本経済新聞にて法律事務所の女性比率に関する記事が公表されたのが記憶に新しい[4]

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(さかい たかのり)

弁護士(第二東京弁護士会)、ニューヨーク州弁護士。
2007年東京大学法学部、2009年東京大学大学院法学政治学研究科卒。西村あさひ法律事務所に入所後、米国University of Virginia School of Lawに留学し、ニューヨークのDebevoise & Plimpton LLPにて勤務。その後、ContractS株式会社の執行役員CEO室室長を経て、2022年に法律事務所LEACTを設立。企業法務に特化し、上場前後のベンチャー企業のクライアントを中心に、リーガルサービスに加え、組織マネジメントや採用支援面からのサポートを行っている。デジタルアスリート株式会社社外監査役。

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