Legal Operationsの実践(13)
――Technology――
三菱商事株式会社
鈴 木 卓
本連載では、これまでCLOCが提供するフレームワークであるCore 12の一つひとつのコアについて、簡単に解説するとともに、各筆者の経験や各社における実践を共有してきた。連載第13回の本稿では、11番目のコアである「Technology」を取り上げる。なお、私見に渡る部分は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織の意見を代表するものではない。
1 CLOCによる説明[1]
CLOCは、Technologyの活用に関する現状として、「マニュアルで、手間がかかり、かつ、(特定の業務に特化したいわゆる)Point Solution[2]に依拠している場合が多く、大きな視点でのTechnologyに関するビジョンを持たず、あまり使われていなかったり[3]、業務フローとつながっていない[4]コストのかかるApplicationを導入している」と評している。
そして、望ましい状態は、「組織内のすべてのニーズに目配りしたTechnologyに関するビジョンを持ち、マニュアルのプロセスを自動化し、(多くは紙ベースで行われている)物理的な業務をデジタル化し、戦略的にTechnologyを導入することで、業務のスピードと質を改善した状態」であるとしている。
以上のCLOCによる説明は、簡潔ではあるが示唆に富む内容を多く含んでいる。たとえば、我々法務は、法律その他の社会規範を使って、目の前の問題を一つひとつ解決していくことを得意としている。そこでは、多くの情報が文字で表現され、それを読んで理解し、事実関係を整理し、規範にあてはめながら、(文字で表現された)現実的な解決策を提示していく。前提となる事実関係は事案ごとに異なり、事案に即した検討・判断が求められる。そのため、伝統的に、全ての業務はマニュアルで処理され、業務の標準化は必ずしも進んでおらず、Microsoft Wordなどの文書作成ソフトやメールに依拠して業務を行ってきた。そして、その方法で業務が十分に回っており、業務のスピードも質も最適な状態に保たれている(と思い込んできた)。もっとも、中には繰返し行われ、いつも誰が行っても同じである(べき)業務も存在しているし(標準化し、自動化することに適している)、コロナ禍を経た働き方の多様化により、誰がどこにいてもチームとして機能しながら業務ができるようにするためのデジタル化の要請、さらには、業務がデジタル化されることに伴って収集できるようになるデータを活用した業務の変革(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が意識されるようになった。そういった観点から、Technologyを適切に活用した、さらなる業務のスピード及び質の改善は、現代の企業法務において不可避といえる。
もっとも、Technologyの活用が重要であるとしても、やみくもに最新のTechnologyを導入するだけでは、かえって手間が増えたり、非効率が温存されたりして、業務のスピード及び質の改善にはつながらない。そこで、次項では、Technology導入にあたって留意すべきいくつかの視点を提示する。
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(すずき・たかし)
2004年に慶應義塾大学法学部法律学科を卒業。