Legal Operationsの実践(11)
――Service Delivery Models――
協和キリン株式会社
宮 腰 和 朗
1 はじめに
本稿では、Corporate Legal Operations Consortium(CLOC)のCore 12のうちService Delivery Models について、その概要を説明するとともに、日本における実践の考察と筆者の経験に基づく取組みの例を紹介する。
なお、本稿は、筆者の所属する組織の見解を述べるものではなく、筆者の個人的な見解である。
2 Service Delivery Modelsについて
⑴ Service Delivery Modelsとは
Service Delivery Models とは、端的には、適切な内部・外部のリソースに、適切な業務が振り分けられることを目指すものである[1]。
CLOCでは、「現状」を、「法務部門は戦略的にフィットしているかを評価することなく、これまで依頼していた法律事務所やその他のベンダーに無計画に業務を依頼することがしばしば起こっており、この状況が、コスト増や業務のスピード・質を落としている」と捉えている。そして、「あるべき状態」として、「相互にまた自己の事業と強く結びつくベンダーの相互補完的なエコシステムを作り出すこと、そして、業務を一定の構成要素にブレークダウンし、それぞれの構成要素を、最もコストパフォーマンスが良い適切なベンダーに振り分けるべきである」とする。また、法律事務所やその他のベンダーの起用の判断が、法務部門に集中化し管理されることにより、結果として、内部の法務部門と外部のベンダーのシームレスな法務機能を生み出す、と説明する。
その上で、より良いService Delivery Models構築のための具体的な施策の例として、①内部、外部の機会を特定するための業務タイプと業務プロセスの分析(戦略的な性質、業務量、要求されるスキルレベル)、②チーム、チャネル、類似業務のプロバイダーを横断する業務プロセスの標準化、③プレイブックを作成し、法務機能としてサービスを提供するにあたっての心構えの浸透を図ること、④サービスプロバイダー、LPO(Legal Process Outsourcing)プロバイダーとの関係性を定義づけ構築すること、⑤プロジェクトを明確で関連性のある要素に分けること、⑥最大限の業務品質を確保するための、インハウスのチームと外部ベンダーの中で、特定の業務を遂行するための最も適切な専門性、経験を有する者を特定し、業務をアサインすること、⑦高いコストでフィットしない法律事務所のサポートへの依存を減らすこと、⑧多様なサービスプロバイダーを繋げるための技術導入、を挙げている。
⑵ 他のCoreとの関係
Service Delivery Modelsは、アウトソーシング先である法律事務所や他のベンダーとの関係性について関連する意味では、CLOC Coreの一つであるFirm and Vendor Management と共通する部分もあるが、Service Delivery Modelsは、業務の最適な分担における法律事務所・ベンダーとの関係性について述べている点で視点が異なると考えられる。
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(みやこし・かずあき)
協和キリン株式会社法務・知的財産部。弁護士。2009年キリンホールディング株式会社法務部に入社後、2021年キリンホールディング法務部より現職に出向。2014-2015年シンガポール国立大学Master of Laws留学。