SH4410 Legal Operationsの実践(18)――世界的なALSPの潮流は日本にもやってくるのか? 渡邊弘(2023/04/17)

法務組織運営、法務業界

Legal Operationsの実践(18)
――世界的なALSPの潮流は日本にもやってくるのか?――

西村あさひ法律事務所

弁護士 渡 邊   弘

 

  • Legal Operationsの実践(23)――最終回――連載の終わりにあたって(座談会)(上)
  • Legal Operationsの実践(24)――最終回――連載の終わりにあたって(座談会)(下)

 

1 なぜ今日本の法務担当者がALSPに注目すべきなのか

 Alternative Legal Service Provider(ALSP)は、一般に、従来の法律サービスを提供する法律事務所以外の者で、伝統的な法律事務所のモデルとは異なる新しい手法(法務領域外を含むコンサルティングやテクノロジーの利用)でリーガルサービスを提供する会社等の組織を指す[1]

 ALSPという言葉は、本稿執筆時点(2023年3月)では日本の法務領域においては馴染みが薄い。それどころか、ALSP先進国である米国や英国等においても、本稿執筆時点からほんの数年前の2015年や2017年のALSPに係る調査のレポート[2](以下「ALSP定期調査」という。)の時点では、法務の市場全体のわずかを占める、定義も外縁も曖昧な存在だったようである。もっとも、2019年[3]や2023年[4]のALSP定期調査は、ALSPに対する急速な認知度の向上や市場の拡大を明らかにしており、米国や英国等において急激にALSPの波が押し寄せている。特にLegal Operationsの中核の一つである法務部門内外のリソースへの適切な業務の振り分け(Service Delivery Models[5])の観点から、今やこれらの国の法務担当者の中では、伝統的法律事務所や純粋なリーガルテックベンダーに加えて、法務部門外のリソースの有力な一つとして、ALSPをどう使いこなすかが喫緊の課題になっている。このトレンドは後述のように日本でも萌芽がみられる。そのため、日本の法務担当者もこの大きな流れに十分に備えておく必要がある。

 本稿では、ALSPについて馴染みが薄い読者を対象として、まずALSPについての基礎的事項を説明する。そのうえで、2023年のALSP定期調査で明らかになった最新のトレンドにも触れ、日本におけるALSPの今後の展望を検討する[6]。なお、本稿はあくまで概説記事である。そのため、わかりやすさの観点から詳細には立ち入らず、誤解を恐れずあえてザックリとした説明を行っている点に留意されたい。

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(わたなべ・ひろし)

西村あさひ法律事務所弁護士。法的文書作成/審査に伴う無駄を徹底的に排除する「BoostDraft」を国内外で提供する、株式会社BoostDraft共同創業者兼取締役。スタンフォード経営大学院及び同法科大学院にてLegalTechビジネスに係る研究を行う。同大学MBA及びLLM。
LegalTechに係る国際的な受賞歴等:
IFLR Asia-Pacific Awards 2023 (shortlisted in “Tech Innovation”)
Financial Times Innovative Lawyers Asia-Pacific Awards 2022 (commended as “Change Maker”)

 
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