Legal Operationsの実践(19)
――Digital Contracting (1)――デジタル技術による契約プロセスの現代化
三菱商事株式会社
鈴 木 卓
MIC Business Solutions, Inc.
大 内 毅
本連載では、これまでCLOCが提供するフレームワークであるCore 12の一つ一つのコアについて、簡単に解説するとともに、各筆者の経験や各社における実践を共有してきた[1]。また、連載第15回以降では、個別のテーマについてさらに掘り下げた検討がなされてきた。連載第19回となる今回から2回に渡り、「Digital Contracting」について議論する。なお、私見に渡る部分は筆者らの個人的な見解であり、筆者らの属する組織の意見を代表するものではない。
1 Digital Contractingとは何か
Digital Contractingとは、デジタル技術を使った契約(およびそのプロセス)の現代化である。
Digital Contractingを実現するにあたっては、まず、Contract Lifecycle Management(CLM)(=契約のライフサイクル管理(およびそれによる契約業務の標準化))から始めるのがもっとも効果的である。契約のライフサイクル管理を実現すると、契約のライフサイクルからデータを収集することができるようになるため、そのデータを使って、契約(およびそのプロセス)を変革(デジタルトランスフォーメーション)し、契約内容および全ての契約に関する側面がデジタル化されることとなる。
本稿では、以下の順で議論を進める。
- ① 伝統的な契約(およびそのプロセス)(以下「伝統的な契約」という。)が内包する課題の整理
- ② それぞれの課題を解決するために必要となるソリューション(オペレーションの見直しである場合もあれば、Technologyである場合もある。)、そして、何よりも契約のライフサイクル管理が重要であること
- ③ データやAIの活用
【契約のライフサイクル】
2 契約にまつわる課題およびその解決策
連載第13回でも議論したとおり、Legal OperationsにおけるTechnologyの検討は、テックドリブンではなく、課題ドリブンで行われる必要がある。そこで、本稿ではまず、伝統的な契約が内包する課題を検討することから始める。
⑴ 課題
伝統的な契約に内包されている課題を契約プロセスに沿って概観すると以下の図のとおりとなる。以下順に検討する。
【契約プロセスごとの課題】
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(すずき・たかし)
2004年に慶應義塾大学法学部法律学科を卒業。
(おおうち・たけし)